――狂気という。しかり、人がこの世の美を見て、真実の美を想起し、翼を生じ、翔け上がろうと欲して羽ばたきするけれども、それができずに、鳥のように上の方を眺めやって、下界のことをなおざりにするとき、狂気であるとの批難を受けるのだから。この話全体が言おうとする結論はこうだ。――この狂気こそは、すべての神がかりの状態のなかで、みずから狂うものにとっても、この狂気にともにあずかる者にとっても、もっとも善きものであり、またもっとも善きものから由来するものである。そして、美しき人たちを恋い慕うものこそがこの狂気にあずかるとき、その人は"恋する人"(エラステース)と呼ばれるのだ、と。:プラトン「パイドロス」
20091122
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エロスについて語る折にアリストパネスが述べる神話。太古の昔人間は現在とは違う存在であった。まず人間には三つの種族があった。それぞれ男の種族、女の種族、そして両性を備えた種族(アンドロギュヌス)である。その姿は、円い背、円筒状の横腹をそなえ、四本の手および四本の足を持ち、円筒形の首の上には似通った二つの顔。この顔は互いに反対側を向いていた。顔の上には一つの頭があり、耳は四つ。性器は二つである。そういった具合である。それゆえ、一つの個体がそれぞれで充足した一つの全体をなしていた。その姿が丸いのはそれぞれ男が太陽、女が大地(地球)、そして両性を備えたものが月という円いものを分有していることによる。ところでこの太古の人間は力強くそして傲慢な意志を持った存在でもあった。そしてある時神々に叛乱を企てるのである。神々は困った。人間を滅ぼしてしまうと人間からの捧げ物がなくなってしまう。さりとてこのままの状態を見過ごすわけにはいかない。なんとか人間を滅ぼさず、しかも人間の力を弱めたい。そこでゼウスは決断した。「人間を真っ二つに両断しよう」。その言葉通り、人間は両断された。両断後アポロンが修正を加えた姿、それが現在の人間の姿である。それ以来、人間は己の失われた半身を焦がれ求めるという。いわゆる恋心である。:プラトン「饗宴」
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